走り屋御用達の「過激モデル」も多数あった! 40歳を迎える日産マーチ激動の歴史
この記事をまとめると
■日産の看板車種「マーチ」を振り返る■今年で誕生から40年目を迎える■欧州では5代目モデルが「マイクラ」として売られている
日産の看板車種「マーチ」の歴史を丸っとおさらい!
先月、日産は欧州市場に向けてマイクラの後継車種となる小型EVを投入すると発表。そのティザームービーでは、丸形のヘッドライトとテールランプを持ったコンパクトなハッチバックタイプのエクステリアイメージが公開された。 詳細な車両情報はもちろん、発売時期や欧州地域以外への展開など、ほとんどの情報が明らかとなっていない状態ではあるが、デザインを見る限りは日本でも歓迎されそうな雰囲気と言えるだろう。 そんなマイクラは、言わずと知れたマーチの輸出名であるが、今回は新たな後継車種が登場するということで、改めてその歴史を振り返ってみよう。
初代K10系(1982年~92年)
1981年に開催された東京モーターショーに「NX・018」という名前で展示されたのち、一般公募によって「マーチ」という車名で翌82年10月にデビュー。ちなみにマーチという名前はもっとも票数が多かった名前ではなかったが、審査員の多くがこの名前を選んだことから決定している。 当初は1リッターエンジンに3ドアボディというシンプルなラインアップとなっていたが、デビュー翌年の9月には5ドアハッチバックを追加。さらに85年2月のマイナーチェンジでは、1リッターターボエンジンを搭載したホットモデル「マーチターボ」も設定されている。 87年8月には3ドアをベースとしたキャンバストップ仕様が追加となり、88年8月にはモータースポーツベース車として「マーチR」をリリース。これは930ccのエンジンにスーパーチャージャーとターボ、ふたつの過給機を装着したもので、110馬力を発生するものとなっていた。 そして89年にはマーチRのロードバージョンである「マーチスーパーターボ」が登場。大型フォグランプがビルトインされた専用グリルなど、アグレッシブなデザインも人気を集めていた。 このように初代からモータースポーツにも積極的に参戦していたマーチ。1984年からは後の「マーチカップ」の前身である「ニッサンマーチレース」というワンメイクレースもスタートしている。 また、日産のパイクカーシリーズであるBe-1(1987年)、パオ(1989年)、フィガロ(1991年)のベースとなったのも初代マーチであり、型式もそれぞれBK10、PK10、FK10と車名の頭文字が当てられている。
2代目K11系(1992年~2002年)
10年という長いモデルライフを経て、1992年1月に2代目へとフルモデルチェンジを果たしたマーチ。3ドアと5ドアのハッチバックというボディタイプこそ不変だが、時代の流れもあってか、デザインは初代とはうって変わって丸みを帯びたものとなった。 また、エンジンも先代のMA型からCG型に一新され、1リッターのほか1.3リッター仕様も追加。リヤサスペンションも4リンクから5リンクに変更されているが、先代にあった過給機付きモデルは設定されなかった。 トランスミッションは5速MTと4速ATのほか、富士重工(現SUBARU)から供給を受けたECVTを“N-CVT”として1.3リッターモデルに設定していた(1993年1月には1リッターモデルにも拡大)。 1997年5月にマイナーチェンジを実施して内外装を変更すると、同年8月には電動開閉式の幌を備えたカブリオレを追加。1999年11月の2回目のマイナーチェンジでは新開発のCVT、ハイパーCVTを採用し、派生車種としてリヤセクションを延長してワゴン風とした「マーチBOX」が登場している。 初代のようにマーチベースのパイクカーは存在しなかったが、オーテックジャパンが手掛けるカスタムカーとして、タンゴ(1996年)、ボレロ(1997年)、ルンバ(1998年)、ポルカ(2000年)が登場しており、社外メーカーからも2代目マーチをベースとしたクラシック風なカスタムカーが多くリリースされていた。
街でよく見るあの型はもう20年前のクルマだった!
3代目K12系(2002年~2010年)
2001年に発表されたコンセプトカー「mm.e」と「mm」を経て、2002年2月に登場した3代目マーチ。愛らしい大きなヘッドライトや丸みを帯びたルックスや豊富なボディカラーが話題となった。 ボディタイプは引き続き3ドアと5ドアのハッチバックで、搭載エンジンは新たにCR型の1リッター、1.2リッター、1.4リッターの3種類。基本は4速ATで、1.2リッターモデルにのみ5速MTが用意されていた。 2002年9月には1.4リッターモデルに後輪をモーターで駆動させる「e-4WD」を設定。翌2003年7月には1リッターモデルが廃止され、同年10月にはオーテックジャパンが手掛けたホットモデル「12SR」が登場した。 2005年8月にはマイナーチェンジが実施され、3ドアハッチバックモデルを廃止。1.4リッターモデルはe-4WDのみとなり、代わりにHR15DE型の1.5リッターエンジンとCVTを組み合わせたモデルが最上級グレードとなった。また、オーテックジャパンが手掛けるSRシリーズにはこの1.5リッターモデルが追加され「15SR-A」が登場している。 2007年7月には欧州市場で販売されていたクーペカブリオレモデルの「マイクラC+C」を1500台限定で輸入販売。輸入車ということで、マーチではなく現地名のマイクラのままの販売となっていた。
4代目K13系(2010年~)
およそ8年半ぶりのフルモデルチェンジで4代目となったマーチ。日本向けの車両はタイの日産の工場で生産されるため、輸入車という扱いとなった。 エクステリアは先代のイメージを踏襲したもので、ボディタイプは5ドアハッチバックのみ。エンジンは時流に乗って高効率な3気筒1.2リッターのHR12DE型のみとなり、組み合わされるミッションも新世代エクストロニックCVTのみというシンプルなバリエーションとなった。 2013年6月にはマイナーチェンジを実施し、日産のファミリーフェイスであるVモーショングリルを採り入れたフロントマスクを採用。また、同年12月にオーテックジャパンが手掛ける「NISMO」シリーズが発売されることがアナウンスされた。 このNISMOシリーズは、専用のエアロパーツやアルミホイール、サスペンションなどを装着したホットモデルであり、通常の「NISMO」ではパワートレインは不変であるものの、「NISMO S」については、通常のラインアップには存在しない直列4気筒DOHC1.5リッターのHR15DE型エンジンと5速MTが搭載され、スポーツシートやボディ補強など、走りに関わる部分に大きく手が入れられたコンプリートカーとなっていた。 2016年4月には、オーテックジャパン創立30周年記念車として「ボレロA30」を30台限定で販売することを発表。これは初代から継続設定されている「ボレロ」をベースに、オーバーフェンダー化などの専用ボディと1.6リッターの専用エンジンなど、オーテックジャパンの技術を惜しむことなく投入したスペシャルモデルで、356.4万円という価格も工賃を度外視した部品代のみ上乗せしたバーゲンプライスと言われている。 2020年7月に実施された改良では、衝突被害軽減ブレーキや踏み間違い衝突防止アシスト、車線逸脱警報といった安全装備がNISMO系以外に標準装備となったほか、4WDモデルが廃止され、2WDのみのラインアップとなった。 なお、欧州では2017年からK14型となる5代目マイクラが販売されているが、日本への導入はなく、今回後継車種が発表されたことで、一部で噂されていた5代目モデルの日本導入は完全になくなったと言えそうだ。 果たして、今回発表されたマイクラ後継の小型EVが次期型マーチとなるのか、それとも別の車両が登場するのか、はたまたマーチの名前は消滅してしまうのか、興味は尽きないところである。