ヒョンデがネッソを投入してもFCV時代は来ない! 水素ステーションの数が「増やせない」根本的な問題とは
この記事をまとめると
■12年ぶりとなるヒョンデの日本上陸によりFCVのネッソが発売される■4ドアセダンのMIRAIとSUVのネッソの登場で消費者はFCVを選べる状況になる■一方、水素ステーションなどのインフラの設置にはまだまだ課題が残っている
ヒョンデ・ネッソの登場でFCVを選べる状態になる
韓国の大手自動車メーカーであるヒョンデ(現代)が、2010年に日本市場から撤退してから12年ぶりに再上陸すると、2月半ばに発表した。5月からネット販売方式で開始する予定だ。取り扱い車種は、電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)に限定する。 FCVのNEXO(ネッソ)は、2018年に韓国で販売をはじめたSUV(スポーツ多目的車)だ。トヨタMIRAIが4ドアセダンを継承して2代目としたのに比べ、世界市場で人気のSUVとしたことなどにより、ヒョンデによればMIRAIより多くの台数を販売しているという。 車体寸法はMIRAIよりひとまわり小さめで、見た目にも手ごろに感じる。現行の2代目MIRAIは、レクサスLSとGSの中間くらいの車体寸法があり、初代より高級車となったが、それなりの大きさを実感させられる。 ネッソの一充填走行距離はWLTCで820km(ただし自社測定値)とされ、MIRAIの750~850km(グレードにより差がある)と同等といえる。 室内の様子は、ネッソがEVのIONIQ5(アイオニック5)と同じように、電動車ならではの新しさと割り切りのある簡素な合理性を印象付けるのに対し、MIRAIは大型液晶画面を備えても伝統的な高級車ならではの空間を継承している。 ネッソの日本導入により、FCVにおいて、SUVか4ドアセダンかとの選択肢が消費者に与えられる。FCVに関心のある人にとって、朗報といえるのではないか。
FCVの本格的な普及にはまだまだ大きな課題が残る
一方、水素ステーションの整備はあいかわらず伸び悩み、なかなか解消しそうにない。最大の課題は、水素という燃料の特性に負うところが大きい。水素は、もっとも軽くて小さな元素だ。このため、水素より大きな元素で作られたタンクから外へ出てしまう可能性を否定できない。万一の事故的な漏洩も含め、安全を確保するためには天井のない水素ステーションでなければならない。つまり、ビルの1階に設置することはできない。 水素ステーション1件を運営するのに必要な土地の広さは500平方メートル(約151坪)なので、それだけの広い土地を持つ人が、建設に数億円掛かるとされる水素ステーションを開設するはずもない。ガソリンスタンドのようにビルの1階に設置できるなら、いずれ採算は合うかもしれない。だが、ビルを建てられないのであれば、郊外の地価の安い場所にしか水素ステーションは整備できないのである。 MIRAIのホームページで検索できる水素ステーションが157軒にとどまるのも、地価と比べ採算が合わないからだ。そして、多くのステーションは、水素を扱う岩谷産業や石油会社のENEOS(エネオス)の経営であるのも、採算が合いにくい証といえそうだ。なおかつ平日の昼に営業しているのは6割程度で、また全157軒のうち17か所は移動式か臨時の施設で、恒久的なステーションではない。 初代MIRAIが2014年に売り出されてから8年目に入り、この状況ではFCVの普及は難しい。