同じ軽自動車でも小回り性能に1.2mもの差が! 最小回転半径の大きなKカーと小回りが苦手なワケ
この記事をまとめると
■「最小回転半径」は取り回しに直結するので日常生活で使用する上で重要な数値だ■軽自動車は最小半径が小さい傾向にあるがグレード次第で変化する■タイヤサイズの大きさが重要な要素になる
最小回転半径にまつわる知っておきたい話
市街地などでの取り回しの良さ、小回り性能の高さを示すのが、カタログにある「最小回転半径」のスペックだ。 基本的にステアリングを目いっぱい(フルロック状態)まで切って、ゆっくりと前進したときに、もっとも外側にあるタイヤの中心が描く円の半径を計測して出てくるのが、この数値となる。 そのためボディ形状による実際の取り回し性とは乖離している部分もあり、最小回転半径だけを鵜のみにして小回り性能を判断することはできないのだが、それでも重要な指標であることは間違いない。 そして、最小回転半径が小さいクルマの条件は大きくふたつある。ひとつは真横から見たときの前後のタイヤ中心間の距離、すなわち「ホイールベース」が短いこと。もうひとつは、ステアリングの切れ角が大きいことだ。同じホイールベースであれば切れ角が大きいクルマのほうが最小回転半径は小さくなるし、逆にホイールベースが長くてもフロントタイヤの切れ角を増やし、さらにリヤタイヤも操舵する4WS機構を備えれば、驚くほど小さく回転することも可能になる。 なお、タイヤ切れ角は、タイヤが小さいほど稼ぎやすい傾向にある。そのため小さなボディでホイールベースが短く、タイヤも小径な軽自動車は最小回転半径が小さい。 実際、多くの軽自動車は最小回転半径のカタログ値が4.4mになっていることが多い。
軽自動車もタイヤサイズで最小回転半径が大きく変わる
とはいえ例外もある。カタログ値でいうと、最小回転半径が4.7~4.8mというのは軽自動車におけるワーストランキングに入ってくる。はたして、どのような面子が“小回りの利かない軽自動車”となっているのだろうか。 最小回転半径4.8mのクルマの中では、ジムニーとタフトというSUVに目が留まる。ジムニーはホイールベースこそ短いが、175/80R16という大きなタイヤを履いていることが最小回転半径を大きくしている。軽自動車は幅が制限される関係で、タイヤハウスのスペースに限りがあり、このサイズのタイヤになると切れ角を稼ぐのが難しくなってしまうのだ。 ベーシックグレードの最小回転半径は4.5mとけっして大きいとはいえないN-ONEでも、165/55R15サイズのスポーツタイヤを履くRSグレードなどでは4.8m組に入ってしまうのは、やはりタイヤの影響を受けていると考えられる。 また、一般論でいえば、横転を避けるためにタイヤ切れ角を小さくするという安全に振ったセッティング手法もある。日産ルークスと三菱eKスペース、日産デイズと三菱eKという兄弟車において、それぞれ太めのタイヤを履いたスポーティグレードになると最小回転半径が大きくなってしまうのは、そのような理由が絡み合ってのことと考えられる。 ところで、ホイールベースが短くてタイヤが小さいといえば、軽自動車の中でもキャブオーバースタイルの軽トラックは別格だ。ダイハツ・ハイゼットトラックのホイールベースは1900mm、スズキ・キャリイは1905mmとなっているが、いずれも最小回転半径は3.6mと同じ軽自動車とは思えないほど小さい。 なお、同じ軽商用車といっても1BOXタイプのモデル(ダイハツ・ハイゼットカーゴ、スズキ・エブリイなど)の場合は、セミキャブオーバースタイルといって、ちょっと鼻先が伸びたシルエットとなっている。そのためホイールベースも長くなってしまう。 ダイハツ・アトレーは軽商用1BOXの乗用仕立てといえるモデルだが、そのホイールベースは2450mmとタントなどとさほど変わらない。ただし、アトレーはFRプラットフォームでフロントタイヤの切れ角を大きめにとれるというメリットがあるため、カタログスペックの最小回転半径は4.2mとなっている。 FFプラットフォームの平均的な性能と比べても、より小回りが利くモデルになっているといえるのだ。